GA4やGTMのタグがブロックされている・・・!!
DALL-E 3で生成
Appleが2023年9月にリリースしたSafari 17では、ユーザーのプライバシーを守るための重要な機能追加が行われました。(一部の記事では「iOS 17で追加された」と記載されていますが、今回の機能追加はiOSに限らずiPadOSやmacOSのSafari 17にも適用されています。)
Appleのプライバシー保護に対する姿勢や今回の機能追加はユーザーとしては大変心強い話ですが、データアナリストやマーケティング担当者は、今回の変更がウェブサイトの分析や広告の効果測定にどのような影響を及ぼすかをより深く理解しておく必要があります。
今回の変更の中で特に影響が大きいものとして、Safari 17ではプライベートブラウズモード使用時にはGA4・Google Tag Manager(GTM)・広告プラットフォームなどのタグの挙動がブロックされてアクセスログやコンバージョンログが計測できなくなっていることが確認されました。
実際にブラウザの挙動を検証していきたいと思います。
プライベートブラウズモードでブロックされるタグの検証
AppleのプライバシーのページにはSafariのプライベートブラウズの説明が以下のように記されています。
「プライベートブラウズ」を有効にすると、Safariはあなたが訪れたサイトを履歴に加えたり、検索内容を記憶したり、オンラインでフォームに入力した情報を保存することをしなくなります。「高度なトラッキングとフィンガープリント保護」を使えば、一段と強力な保護機能で、ウェブサイトがあなたのデバイスをトラッキングしたり特定したりすることも防げます。既知のトラッカーはページをまったく読み込めなくなり、リンクトラッキングからの保護機能が、あなたがウェブを見ている時にURLに追加されたトラッキングを削除します。
また、Safari 17のリリースノートでは以下の記述を見つけることができます。
Added blocking for known trackers and fingerprinting. (99360202)
Added console log messages when blocking requests to known trackers. (100523322)
Safari 17では”既知のトラッカー”(以下ではより馴染みのある「タグ」という表現に言い換えます)をブロックすること、またブロックした際にはコンソールログメッセージを表示するということですが、Appleの公式ページのどこを探しても具体的にどのようなタグがブロックの対象なのか、その詳細についての言及は見つけることはできませんでした。
そこで、実際に様々なウェブサイトにSafari 17のプライベートブラウズモードからアクセスして、Webインスペクタツールのコンソールに表示されるメッセージを確認する形で、設置されているタグが正常に動作しているか、検証を行いました。
タグがブロックされた際には、WWDC23の動画で紹介されているとおり、「Blocked connection to known tracker」から始まるメッセージが表示されます。(この場合、当然Cookieも保存されません。)
GTMをはじめ多くのサイト計測タグや広告計測タグがブロックされていることが判明
GTMのタグがブロックされていることを知らせるメッセージ
検証の結果、Safari 17のプライベートブラウズモードでは、GTMのタグ自体がブロックされることで、GTMで設定している全てのタグが機能していないこと、さらに、GTM経由ではなくページに直接設置されているタグも、同様にブロックされていることが判明しました。
海外のブログ記事では、GTM以外のタグマネジメントシステムを利用している場合、一部のタグがブロックされない事例も報告されています。
しかし、実際にはほとんどのサイトでタグの設置や管理にGTMが使用されていますし、回避策を講じたとしてもそれらもいずれブロックされる可能性が高いと考えられます。
また、OneSignalというプッシュ通知サービスのタグもブロックされていることが確認されました。
計測だけでなく、UXの向上やマーケティング施策目的でタグを設置する場面も、それらのタグが機能しないことを前提とした上での分析・レポーティングやサイト設計・実装の重要性が高まっています。
他にも検証を進めるなかで以下のようなこともわかってきました。
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macOSのSafari 17 だけでなく、iOSのSafari 17でも同様の結果になりました。
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Safariの「高度なトラッキングとフィンガープリント保護」の設定が「すべてのブラウズ」だと、通常のブラウジングでもタグがブロックされます。(デフォルト設定ではプライベートブラウズ時にブロック)
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タグのブロックとは関係ないので本記事では詳細には触れませんが、広告クリック時にURLに付与されるgclid(GoogleクリックID)などのユーザーIDに関するパラメータも取り除かれるようになっています。
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この変更によりリスティング広告のCV計測にも影響が出ています。
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現状UTMパラメータは削除対象ではありませんが、将来的には対象になるかもしれません。
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データアナリスト・マーケティング担当者としてどう対応すべきか?
従来からAppleとAdTech・MarTech各社との間で、プライバシー保護が強化されては回避策が講じられるというイタチごっこが繰り広げられてきました。
しかし、昨今のプライバシー保護に対する消費者意識の高まりを無視して、法律的に問題ないからと抜け穴のような方法でトラッキングを続けることがユーザーに求められていることなのか?ビジネス価値の向上につながるのか?
目先の利益だけでなく、自社の企業理念などに立ち戻って深く考える必要があると思います。
今回のような大きな変化が発生した際には、まずは、何が起こっているのか?どのような影響があるのか?をしっかりと把握した上で、データや施策との向き合い方を見直すいい機会です。
具体的な対応としては、プライベートブラウジングの認知度や利用率が正確にわからない以上、影響を正確に評価することは難しいですが、ウェブサイトの分析データが欠落している可能性を考慮し、KPIの見直しを行ったり、プライベートブラウジングの認知度や利用率、消費者の意識を把握するためのユーザーアンケートなどの調査も検討できると思います。
データの透明性とプライバシーに対する消費者の期待値がどんどん高まる一方で、データアナリスト・マーケターとしては、それらの要求を満たしつつビジネスを拡大させる方法を模索していかなければなりません。
変化の激しいデジタルマーケティングの世界において、常にユーザー視点に立ち、ミクロとマクロ両面から状況を観察し、理解し、最適なアクションプランを提案・実行していく能力が求められています。